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遠回りのススメ…
今年の夏は異常に暑いですね。みなさん、如何お過ごしですか?
「♪夏が来れば思い出す…」
そう、あの歌にあるように僕も夏が来ると思い出すヒトコマがあります。
今回のコラムは僕が24歳から2年間欧米を放浪していた頃のお話をしましょう。
―広上淳一氏のひとことをきっかけに欧米へ
大学を卒業しても、作曲科なんて就職する先もなく、なんとなく大学の研究科に残っていたある日、先輩でもある指揮者の広上淳一氏が、僕の家に遊びに来て、「オーケストラのための三つの断章」という作品を聴いたのが、僕がヨーロッパへ行くきっかけでした。
「この曲を向こうでやろう!」
この広上さんの一言で、当時の日本の現代音楽に疑問を持ち、悶々と過ごしてた僕は、研究科を一年で辞め、自分の作品がヨーロッパ人にどのように聴かれるのか、そして向こうの現代音楽の現状はどうなのか、直接自分の目と耳で確かめようと、何のためらいもなく日本を飛び出していきました。
―フーテンの寅さん状態の半年
日本を旅立ったのが4月、演奏会は10月でオランダの北、フローニンゲンと言う都市のオーケストラで改訂版世界初演をすることが決定しました。
でも、この間の半年間、僕は全くの「フーテンの寅さん」状態になったのです。宿は広上さんの当時住んでいたアムステルダムの小さなアパートに転がり込んだものの、毎日を有り余る時間とともに、こんなにも時間がゆっくりと流れるのを、ヒシヒシと肌で感じたことはありませんでした。ある人の紹介で、週に一度当地の日本人学校の音楽の先生をやって、なんとか小銭を稼いでいたのですが、あとの6日間はプー。まさに寅さんのような生活ですね。
―アムステルダムの運河のようにゆったりと流れて行く毎日
そんな生活の中で、僕の好きな場所がありました。アムステルダムの真中、あのコンセルトヘボウの近くの大きな公園です。池があって小川が流れ、丁寧に整備された芝生は、オランダっ子の憩いの場所でもありました。僕はそこで日がな一日、音楽のこと、日本のこと、現代音楽のこと、ヨーロッパのこと、そしてこれからの自分の音楽のこと等など、とり止めもなく、でも時間を忘れ考え、思想していました。
―今も僕の頭の中にある風景
ヨーロッパの夏は、日本のように湿気がなく、本当に心地よい天気の中、想いを巡らせていました。そしてそれは、オランダからフランス、スイス、オーストリア、ドイツの各地に行っても変わらず、僕の頭を埋めていました。夏から秋にかけ、自分の作品がヨーロッパでどのように受け入れられるのか、それは文化・思想などの民族・国境を越えられるのか、そして僕はこれから作曲家として何をしなければならないのか。あの半年間の不安と期待を伴った不思議な時間は、今でも僕の中で大切な経験です。
何かを見つけるためには、とっても長く無駄な時間が必要なんだと、今は思っています。答えは、そこには無く、ずーっと遠いところにあるんですね。でも、その過程は自分にとって財産であり、知識と経験になります。遠回りすれば、いろんな風景が見れて、心に深く刻まれていきます。それが豊かさなのかもしれませんね。
〔編集後記〕
第二回目のコラムは「遠回りのススメ」_いかがでしたか?皆さんの心の風景ってどんな風景でしょうか?
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