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10月2日(水)曇り⇒晴天

毎日の食べ過ぎが祟ったせいか、二人とも朝起きても朝食が取れない状態。今日はオフだし朝はゆっくりしようということで、午前中はメールやネットの整理。スケジュールの確認などをします。

お昼前に、そろそろお腹も空いてきたということで、ブランチ&市内観光へ。

ここトロンハイムは、北欧の中で最も古い町のひとつで、街の中心にあるドーム(大聖堂)は、11世紀からの建物です。その隣りには、その頃からの城壁で囲まれた街が博物館と共に保存されており、いうなれば、ノルウェーの京都・奈良と言ったところ。また川沿いには、横浜や小樽のように旧倉庫街を再開発して、オシャレなレストランやカフェが並んでいます。街自体も、1日あればグルッと一周まわれるくらいの、こじんまりとした街ですが、そこはノルウェー第三の都市だけあって、デパートやショップ、レストランやカフェ等どこもとっても賑わっていました。

初めての土地を、こうしてあてどなくブラブラと歩くのが好きです。人々の様子、ショップのインテリアや品物の種類、食べ物の物価等など、いろいろと見て歩くと、段々とノルウェー人の生活の一端が見えてきます。そうしてみての第一印象。街がとっても清潔。そして、人もドイツと比べて、スタイリッシュというか、手足が長く金髪が多いので、カッコ良く見える。ドイツでは、ただデカイ人が多くて、ちょっと恐い感じもしたのですが、ここではそんな脅威(?)はありません。むしろ(「日本週間」ということもあるのでしょうが)どこでも対応が柔らかく、笑顔なのがとっても印象的でした。いい人達だ?(単純?)。第二の印象としては、少々物価が高いということ。この国ではあらゆる物品に24%の税金が付加されます。北欧は、超優良社会保障国家ですからね。でも、街でサンドイッチとコーヒー買っても1500円位しました。しかもセルフサービスで!長居するにはキツイなぁ。デパート等で衣類を見てみても、ドイツよりあきらかに5割くらい高い。みんな高給取りなのかな?

朝から夕方まで、街を歩き回りホテルへ。さすがに疲れました。なにせ日本では、スタジオか自宅での座り仕事。こんなに歩き回る事は滅多にありません。運動不足だなとは感じてはいたのですが、こんな時に体力の衰えを実感します。日本に帰ったら、なにか運動しなくては・・・。最近は我が家の「スラムマン」もオヒマだったからなぁ。ホテルで一息ついて書き物などをして、夕食のレストランを考えます。全くアテがないからカンに頼ってお店を決めました。ホテル近くの川沿いのお魚専門レストラン。なかなか良い雰囲気。帆船の船内を模したデザインです。ここはやっぱり名物とある、茹で海老と牡蠣を注文でしょう!セットにムール貝とホタテも付いていました。うーん、ウマイ!結構な量があったのですが、気が付けば二人できれいに平らげていました。久々に食べるあっさり味の食事ということもあったのでしょう。やはり、日本人には魚料理が合うのでしょうか。

程よい満腹感でホテルへ戻り、就寝。

10月1日(火)ノルウェー晴れ

雲ひとつない青空です。ミュンヘンであまりに寒くて買ったジャケットが、ここでも役に立つはずだったのに、街には半袖のお兄ちゃんが歩いている。気温10℃。日本だったら半袖には辛い気温ですが、こちらの人にとっては『温かい』のでしょう。トロンハイムの小春日和といったところでしょうか。 今日は、10時からリハーサル。オーケストラのスタッフが、9時半にホテルへ迎えに来てくれました。でも、なんとオーケストラの事務所とホールは、ホテルの目の前。歩いて10秒の所だったのです。

ホールは、近代的な雰囲気で、音響がとてもイイ。楽員達もみなステージに集合しつつありました。ここでも僕の曲を練習している後姿に感動。  リハーサル10分前に、指揮者の大勝さんが控え室に来て、約20年ぶりの再会を果たしました。大勝秀也さんは、東京音大時代の1年先輩で、僕が副科で指揮をとっていた時の同門でもあります。現在は、ドイツと北欧を中心に活動していて、時折日本にも仕事で帰国しているらしいです。つもる話もそこそこに、リハーサルの時間になったのでステージへと向かいます。

元来、ヨーロッパのオーケストラは、ホールとオケが一体になっているので、日頃の練習も本番と同じステージ上で行います。これがオーケストラにとってどんなに良いことかは言うまでもありません。一都市に多数オケがある場合や、バイエルン放送響みたいな放送局のオーケストラなどは、ホールでの練習というのはゲネプロしか持てません。日本のオーケストラもそうです。やはり、ホールというホームグラウンドでいつも練習ができるというのは、羨ましい限りです。

リハーサルは、10時から14時までを3セッション分け進められました。まずは、近衛秀麿の「越天楽」。原曲は雅楽であるこの作品は、オーケストラでその雰囲気を出すことを試みた最初の作品と言っても良いでしょう。戦前の作品にしては、オーケストレーションの技術が現代にも通じるものがあります。ただ、やはり雅楽を理解したという前提の元で書かれているので、西洋人が譜面どおりに演奏しても、その音楽は十分表現されません。大勝さんは、フレーズや和音、表現法などひとつひとつ丁寧に解説しながらリハーサルを進めていきました。単純な音群の中に、ようやく楽員たちも「音楽」をつかめたようです。

こういうやり取りは、指揮者にとっては大変だろうけれど、とても興味深く見る事ができました。後で、大勝さんとも話したのですが、結局日本のオケで、ドイツ人がベートーヴェンの曲を指揮するのと同じだということです。楽譜は、ただ演奏すれば良いというわけではないのです。そこに「音楽」を注ぎ込む哲学なり、意図が必要なのですね。楽譜をなぞるように弾いただけでは、感動は表れない。そこに生きる人が作り上げていく「なま」ものだからこそ、時代を越え、国境を越え、音楽は演奏され、聴き続けられているのでしょう。「越天楽」を演奏する楽員達の顔が、次第に変わっていくのが「音楽を作っていく過程」として、大変おもしろかった。

さて1セッションの「越天楽」のあと、、「民舞組曲」のリハです。ドイツの時は、指揮者がイタリア人だったので、いろいろと僕自身が説明をしたのですが、今回はその必要はありません。客席で、じっくりとリハの様子を見せてもらいました。第1曲目の「囃子」からスタート。なかなかノリといい、演奏技術といい、イイ感じです。掛け声もサマになっている。オーケストラ全体が楽しんで演奏しているのが、視覚と聴覚の両方から感じ取れます。先ほどの「越天楽」と違い、僕の作品はプロレタリアート=土俗的なので、すぐさま共感できるのでしょうか。大勝さんも、この曲では観念的なことより、演奏の細かなこと、スタッカートや楽器のバランスなどに重点をおきながらリハを進めます。全5曲それぞれに細かなリハーサルをして、丸々2セッションを消化しました。

リハの後、たくさんの楽員が声を掛けてくれます。ミュンヘンでもそうでしたが、こちらのオーケストラの楽員は、とてもストレートに作曲家と付き合ってくれると思います。前にも書きましたが、やはりそこには作曲家へのリスペクトがあるのでしょうか。ノルウェーと言えば、世界的作曲家グリーグを生んだ国です。世界中の人がグリーグの音楽を愛するように、ノルウェー人も彼に愛情と畏敬を捧げています。そういう中で、やはり現代の作曲家に対しても身近に感じるものがあるのでしょう。

充実したリハーサルの後、指揮者室で大勝さんとしばらく昔話に花を咲かせました。なにしろ卒業してから18年です。卒業後、お互いの活動は風の便りやコンサートのパンフなどで知ってはいたけれど、やはり積もる話の内容は、プライベートなこと。そこは、同門の先輩と後輩。遠慮なく話せるわけで、時間の経つのも忘れてしまいました。残念ながら、ここではちょっと書けないけれど、まぁ、ご想像にお任せします。(汗)

リハーサル後、ホテルで待つ母親を連れて街へ出ます。まずは、水やビールの買出し。ホテルの冷蔵庫にもあるのだけど、あんな高いものを5日間も飲むわけにはいきません。冷蔵庫の中身を出して、買ってきたものを入れるのです。これ旅行者の鉄則ですよね。え?ケチくさい?いえいえ、合理的なんですよ。(笑)街に出たのは5時過ぎでした。もう白夜は終わった季節でしたが、まだ日が長いようです。夕暮れがずっと続く感じ。緯度的には日本より随分北なのですが、街の雰囲気は秋の北海道のよう。ロマンチックです。でも、隣りには母親なんだなぁ。ヨメさんにこの景色を見せてあげたかったな・・・。うちの母親は、マイペースです。興味があれば、どんなとこへも行ってしまう。ミュンヘンでも、散々買い物に付き合ったのですが、今日も夕暮れのトロンハイムをグルグルと回ってしまいました。まぁ、街の探索がてらだからイイか・・・。明日は、僕の曲のリハーサルはないので、オフ日です。

うう、どうなることやら・・・。

ホテルに戻って、9時過ぎに遅い夕飯。ここのところの3食生活(日頃は2食)が続いてるせいか、お腹の減り具合がそんなでもない。軽い食事にしようと、レストランで魚介スープを注文したのですが、ドンブリ2杯分ぐらいある量!ひぇ?、こっちの人は体格もいいから、いっぱい食べるんだろうけど、華奢な日本人にはヘビー級です。でも、味は美味しいんですよ。ノルウェーは、サーモンにも代表されるように魚料理が多いので、日本人の舌にも合うようです。でも、こっちの人は、このスープの他にもメイン料理を食べるんだもんなぁ。凄いなぁ。変に感心。

毎日、満腹状態で帰路につく僕達ですが、はたして体重はどうなっているのか・・・それだけが、コワイ。

9月30日(月)またまた快晴

朝11時30分のフライトということで、さっさとシャワーと朝食を済まして早めに空港へ。やはり、9.11テロ事件以来、空港でのチェックは世界中厳しいようで、早めのチェックインが無難なのです。

ミュンヘンからノルウェーの首都オスロまでは、約2時間。機内で軽食を食べたと思ったら、もう眼下には北欧の山や湖が見えてきました。空気が澄んでいるせいか、オモチャのような可愛らしい家や凍った川が、直ぐ近くに見えます。程なくしてオスロ空港に到着。ここで国内線に乗り換えて、目的地のトロンハイムへ向かいます。驚いたことに、ノルウェーに入国した際パスポートチェックがありませんでした。確か、ノルウェーはEUには加盟していないはずなのですが、様々な国際協定は結んでいるので、これもそのひとつなのでしょうか。預けていた荷物を受け取り、次の飛行機のチェックインを済ませます。乗り換えには、約1時間あったので余裕です。

オスロからトロンハイムは、約40分。ここでも軽食が出ます。食べ終わったと思ったら、着陸態勢。ああ忙しい。トロンハイムまでは、無事に着いたのですが、ここで思わぬハプニングが。ノルウェーの貨幣であるクローネに両替する銀行が閉まっているのです。ええー!そんなー!時刻は、まだ夕方の4時。空港の銀行がこんなに早く閉まるなんて聞いてないよー!ウロウロしていたら、クレジットカードのCDを見つけました。ああ、助かった・・・と思ったのもつかの間、何を勘違いしたのか「デンマーク・クローネ」を引き出してしまいました・・・。何でデンマークの紙幣がここで出て来るんだよ?!?同じクローネだから、ノルウェーでも使えるのかな、と勝手に判断。

タクシーに乗ってホテルへ。街までは約30分。のどかな風景を見ながらも、内心「大丈夫だよな・・・」と不安な気持ち。ホテルへ到着して料金を渡すと、運転手さんの顔付きが・・・曇りました。「これはデンマーク・クローネだから使えないよ」あちゃー、やっぱりダメか!ま、ホテルのフロントで両替してもらおう、と思ったら「ダンナ、クレジットカードでも支払いができますぜ」と運転手。そうだ、こんな文明の利器(死語?)があったではないか!世の中便利ですよね。(え?みんな知ってるって?)

このホテルはミュンヘンのホテルとは違い、総ガラス張りのモダンなホテル。部屋も明るくて清潔なのですが、なんとお風呂がない!シャワーのみです。こんなにゴージャスなホテルなのに・・・。北欧はサウナがあるからバスダブに入る習慣がないのかな?風呂好きの僕にとって、5日間も風呂ナシで滞在するはキツイなぁ。まぁ、郷に入れば郷に従え、ですね。

今日は、ハプニングもありで少々疲れ気味。夕食をとって、直ぐにベッドに入りました。

9月29日(日)快晴

今日も、雲ひとつない見事な快晴。天気が良いと、気分も良いものです。

今日は、朝の11時からミュンヘン・フィルハーモニーのコンサート。演目は、シュニトケの「チェロ協奏曲」とドボルザークの「新世界から」。おお、なんて朝からヘビーなんだ。コンサートパンフレットを見てみると、ここミュンヘンでは、朝と夜のコンサートが通常からあるようです。「民舞組曲」を公演した2日目が朝だったのは、特別なのかっと思っていたら、そうでもなさそう。でも、オケの楽員は大変だろうな。こんなビール大国なのに二日酔いできないし。

余計な心配をしながら、市電に乗って会場のガスタイク文化センターへ。今日のホールは、日本のサントリーホールと同じく、コンサート専用ホールです。しかも、ワインヤード式といってやはりサントリーと同じく、ステージを段々畑が囲むように客席が配置されているホール。ステージには1曲目のシュニトケの作品のセッティングがされてありました。協奏曲なのに大編成のようだなぁ。今日の曲は1985年に作曲された作品で、僕も初めて聴く曲なので興味津々。おや? ステージ前にスピーカーが2台。なんで??まさかとは思いつつ、オーケストラの登場を待ちます。

ドイツでは、お客さんも楽員も時間ギリギリになるまで席につきません。せっかちな日本人としては、最初客がいないのか?!なんて余計な心配をしてしまいましたが、天下のミュンヘン・フィル、そんなことがあろうはずがない。ちゃんと時間には、客席は満員、オケも着席している。当たり前ですよね。お客さんの拍手に迎えられ、ソリストと指揮者が登場。1曲目の棒が振り下ろされます。リリカルなチェロのテーマに導かれ、次第にオーケストラが加わっていきます。編成は、3管(Trp,Trbは4管!)編成にピアノにチェンバロといった豪華大編成。案の定、段々とオケは大音響の塊となっていきます。シュニトケの作品は嫌いではないのですが、この炸裂さがチェロとのバランスを壊さないか?などと心配していたら、なんと左右のスピーカーからチェロの音が!

ええー! そんなんあり!?

まぁ、シュニトケも書いてるうちにどうしようもなくなったのでしょうが、こういう方法は個人的には感心しません。ソリストの音色や演奏も良かっただけに、PAからの音にはちょっと興ざめでした。うーん、ゲンダイオンガクって…でも、チェロもオケも大熱演で、この40分にわたる大曲を見事に演奏していました。満場の拍手です。

休憩を挟んで、後半は「新世界」。この曲は母親も知っている曲で楽しみにしているようです。僕も生で聴くのは久々。第一楽章の棒が、ゆっくりと振り下ろされます。おお、良いアンサンブル。期待大。演奏は、第一楽章から熱気あふれる演奏で、僕の隣りのお客さんも少々興奮気味。第二楽章の、あの有名なコールアングレの演奏も素晴らしく、そして、エネルギッシュな第三楽章・第四楽章と、息もつかせぬ白熱の演奏。終わった途端、ブラボーの嵐です。隣りのお兄ちゃんもブラボーを絶叫。いやー、その気持ちわかりますよ。低血圧の人には辛いかもしれないけど、朝からこんな快演を聴かされると、これからの一日がとってもハッピーな気分になります。

ここミュンヘンは、バイエルン放送響、歌劇場、そしてミュンヘン・フィルと、世界水準のすばらしいオーケストラを3つも抱えています。こうしたレベルを維持するのは、並大抵の努力ではないのでしょう。オーケストラとその関係者へ頭が下がる思いです。なんで、その10倍以上の人口を抱える東京では、こうはいかないんだろうか・・・。石原都知事、なんとかして下さいよ!

さて、コンサートをあとにした僕らは、今回の旅の最終イベント、オクトーバーフェストへと向かいました。天気は晴天、曜日は日曜とあって、凄い人だろうと予想はしていましが、それはもう予想をはるかに越えた人人人でした。東京ドームの何倍もあるような広い土地に、各ビール会社のテント小屋(と言っても体育館のような大きさ!)や移動遊園地が設置されているのですが、もうどこにい行っても渋谷の駅前のスクランブル交差点状態なんです。そして、どこの小屋に入ってもすし詰め満員状態。この小屋の中では、10人位のバンド演奏もやっていて、お客さんも歌ったり踊ったり、それはもう学生コンパ状態。やっとの思いで、露店のホットドックにありつけたものの、やはりここでビールを飲まないわけにはいかない。何軒か小屋を回っては席を探しました。

ようやく、4,5件目で席を確保して、ビールを注文。おお、来た来た!1.5リットルは入りそうな特大ジョッキを8個も抱えて(信じられる?)、民俗衣装を着たお姉さんが注文を取りに来ました。とりあえず「ツバイビア、ビッテ!」。なんとかこのくらいのドイツ語は喋れるようになりました(ま、毎日ビール飲んでるしね)。料理は、まわりを見渡してから注文することに。隣りのカップルが、美味そうに鶏の丸焼きを食べています。どうやら、これが定番のようです。またまた凄い勢いでビールを運んできたお姉ちゃんに、「これアイン、ビッテ」。ん?「これ」は日本語だったけど、なんとか理解してもらったみたい。ま、定番だしね。少し待って、ようやく鶏の丸焼きが。こういうお祭りの時は、お店の人も大変なんだから、気長に待たなくちゃね。

ガブっと、まずは一口。ウマーイ!!塩コショウだけの単純な料理だけど、これがビールにピッタリで最高!やはりビールに合う料理を心得てるんですね。まんまとハマッてしまいました。腹と気分が大満足になって、人出も多くなってきたので、夕方にはホテルへ引き上げました。オクトーバーフェストは、これからが本番らしいのですが、人出の多さと酔っ払いの凄さ(体格のイイ酔っ払いはコワイです)を避けて、夕飯はホテルで大人しく食べることに。

明日は、次の公演のためノルウェーに移動。朝も早い。と言いつつ、これを書きながら、ふと時計を見ると4時!夕方の4時ではないですよ。もう寝なきゃ!

9月28日(土)ようやく晴れ

朝目が覚めて、窓の外を見ると快晴! やった?!ようやく晴れだー!!今日は、午後からオーケストラの鈴木さんが市内案内をしてくれます。なんというナイスタイミング! 昨日までのドンヨリ雲がウソのようです。

ドイツに来てから、規則正しい生活が続いている僕ら。シャワーと朝食を段取り良く済ませて、午前中に近くのネットカフェへ。ホームページ等いろいろとチェックを済ませました。こうしてみると、まさに時代はネット時代なんだなと感じます。遠くドイツから、リアルタイムで日本にアクセスでき、しかも日本語で書き込み入力(ちょっと大変だけどね)できるなんて、夢のよう。

数年前に、録音でロシアに行った時、海外で使える携帯電話をレンタルしたのだけれど、この時も感動したなぁ。電話事情の悪いロシアで、なんのストレスもなく日本へ通話できるのが、これまた夢のようでした。今はさらにインターネットです。なんだか、1万キロ以上も離れている気がしないなぁ。16年前に放浪していたときは、ホント日本は『かの地』って感じでしたからね。ありがたい。

12時半に、ホテルのロビーで鈴木さんと待ち合わせ、早速ニンヘェンブルク城へ行きました。ウィーンのシェーンブル宮殿に似たこのお城は、17世紀から19世紀に渡って作られ、その建物と庭園は眩いばかりの優雅さ。庭園は市民の憩いの場として解放され、自由に行き来できます。造園とは言え、ヨーロッパ人は本当に自然を生活の中に取り入れるのがうまい。ドイツは特にエコ意識が強い国でもあります。まず、どこに行っても紙コップや紙の皿がない。全部リサイクル素材なのです。自然を壊さない、共存するというのが、彼らの考えの原点なのでしょう。確かに、昨日のドイツ博物館で見た炭坑のジオラマや、リール工業地帯に代表されるドイツの工業技術は、19世紀から20世紀に渡る世界のトップ技術でした。飛行機やエンジン・原子力など、今や僕らの生活になくてはならない基盤がこの地で開発されてきました。しかし、今は生活環境の自然への共存が、もっと率先して行われているのです。でも、それはこのニンヘェンブルク城を見るように、元々ドイツ人にあったものなんでしょう。無理のない、肩肘張らないエコ意識が、すでに何百年も前から根付いていたんだな思います。

そんなことを徒然に思いながら、市電に乗って、次ぎはミュンヘンっ子の胃袋といわれるビクトリエンマルクトへ。ここは、肉・魚・野菜に果物等など、いろんな出店がひしめき合っている市場です。土曜日ということもあってか、お昼過ぎなのに凄い人出。いろんなお店をひやかしながら、鈴木さんお勧めのピクルス(西洋風きゅうりの酢漬け?)のお店へ。一本単位で売ってくれて、その場で立ち食いをするのです。ファーストフード感覚。スッパイかなと思ったのですが、意外にそれ程でもなく食べやすい。大柄なドイツ人に混ざって、人だかりの中、きゅうりをパクつきます。

ドイツでは、ソーセージの付け合せに、ザワ?クラフトというキャベツの酢漬けのようなお惣菜が付いてきます。ドイツ人はこのような酸味のある食べ物も好みなんだなぁ。ただ、鈴木さんによれば、ヨーロッパの野菜は、加工しないと硬かったりマズクて食べられないから、このような料理法が発展したのだということでした。土地土地に合わせていろいろと考えるものだなぁ、と感心。

その後、市内を歩き、ミュンヘンの州立音楽学校を見学に。この建物は、元々ナチスの本拠地だったらしく、ギリシア風の建物で、威圧感を感じるほど堂々としたものでした。でも、一歩中に入れば、そこは音楽学校。あちこちから、ピアノを練習する音が聞こえてきます。なんだか懐かしい雰囲気。ここから、未来の音楽家が巣立っていくんだなぁ、と思いながら大理石でできた廊下を、静かに歩いて行きます。おお、上から下まで全部大理石だ。さすが元ナチスの本拠地。変な感心をしてしまった。

音楽学校をあとにして、散歩しながらホテルへ戻ります。ミュンヘンは、そんなに大きくない街です。市電やバス・地下鉄も発達していますが、歩いて見て回るのも充分可能な大きさなのです。日頃、全くと言って良いほど歩かない僕ですが、こうして毎日歩くと、体の調子がイイ。快食快便。天気の良い日にこうしてノンビリ歩くのは良いものですね。東京での締め切りの毎日がウソのよう。こんなんで、帰国してまた東京の生活に戻れるのかしら…。

すっかりお世話になった鈴木さんに、充分なお礼も言えないまま、次の予定があるのでと、ホテル前で別れます。ドイツに来て、もう30年以上になる鈴木さんは、バイエルン放送響では終身楽員になっているらしい。既にオケの中では古カブです。いろいろなドイツの音楽事情やオーケストラの状況などを教えていただきましたが、本場ドイツでも、音楽家の環境は決して良いものではないようです。若い人達のクラシック離れへの懸念や、啓蒙の意図もあって、今回のような「ヤングピープル・コンサート」をはじめとするいろいろな活動をやっているとか。鈴木さんは、日本から「題名のない音楽会」のビデオを友人に送ってもらい、いろいろ研究をし、ドイツ版の「題名?」を作りたいともおっしゃっていました。僕も、偶然とは言え、この番組に携わっているスタッフの一人として、何かお手伝いできればと思いました。 オーケストラの音楽は、取っ掛かりは難しいように思われがちですが(ドイツでもそのようです)、クラシックだけでなく映画音楽・ポップス等など、一度好きになれば一生の友達になれる宝物なのです。そういうキッカケ作りのお手伝いができれば嬉しい。

さて、今日のメインイベントはもうひとつ。バイエルン州立歌劇場での「エレクトラ」。ミュンヘンに来てオペラを観ないわけにはいかない。しかも、R.シュトラウスの「エレクトラ」。日本じゃめったに公演される演目じゃないから、これは希少価値。大体この作品、オーケストラも4管編成(ホルンなんて8本!)で、100人近い楽員がオケピットに入って演奏するのです。これは壮絶。期待に胸を膨らませ、公演30分前には歌劇場へ到着。パルテノン宮殿のような作りの入り口から入り、3階席の中央最前列の席に着席。まあ、我ながら良くこんなイイ席が取れたものだと、座ってから感心しました。客席は満席、4階以上の後ろには立見もいるほどです。開演前まで、うんぬんと母親に「エレクトラ」のあらすじを説明し、あとは眼下のゴージャスなお客様方をウォッチング。さすがですね、みなさん。タキシードにイブニングドレス。絵に描いたように紳士淑女がご着席なさってます。歌劇場のもうひとつの側面は、社交場でもあるわけで、開演前までの時間を楽しそうにオシャベリしてます。そんなザワザワとした雰囲気の中、オーケストラの楽員たちがピットに入ってきて着席。しばらくして、拍手を受けながら指揮者も登場。

さぁ、開演。ジャン!

おお、やはりウマイ!当たり前だけど、つい感心してしまう。オペラのオーケストラって、正直言ってあまり上手いところがないんですよ。その理由は、ここでは割愛しますけど、このバイエルン州立歌劇場のオーケストラは凄い。しかも、R.シュトラウスの派手なオーケストレーション&大編成だから、最初から目(耳?)を皿のようにして(?)聴きました。タイトルロールのエレクトラを演じるGabriele Schnaut女史をはじめ、歌手陣も素晴らしい。演出・装置も、ドイツらしくモダンな中に観念的な意図のある出来映えで、あっという間の2時間でした。初オペラ体験(初めてがバイエルンとは贅沢?!)の母親も、感動していたようです。期待はしていたものの、それ以上の好演で大満足。

それにしても、シュトラウスは派手にオケを鳴らすなぁ。でも、それが歌い手の邪魔をするわけではなく、ドラマをより興奮へと導いていく。やはり、オペラというものをトコトン知っているんだなぁ。劇伴の仕事をしている僕としても、勉強になるところが多々ありました。

火照った顔に夜風が気持ち良く、今日の演奏の感想を話しながらホテルへ。明日は、朝からミュンヘン・フィルのコンサートだ。今日も早く寝なくっちゃ。

おっと、その前にビールね。

9月28日(土)ようやく晴れ

朝目が覚めて、窓の外を見ると快晴! やった?!ようやく晴れだー!!今日は、午後からオーケストラの鈴木さんが市内案内をしてくれます。なんというナイスタイミング! 昨日までのドンヨリ雲がウソのようです。

ドイツに来てから、規則正しい生活が続いている僕ら。シャワーと朝食を段取り良く済ませて、午前中に近くのネットカフェへ。ホームページ等いろいろとチェックを済ませました。こうしてみると、まさに時代はネット時代なんだなと感じます。遠くドイツから、リアルタイムで日本にアクセスでき、しかも日本語で書き込み入力(ちょっと大変だけどね)できるなんて、夢のよう。

数年前に、録音でロシアに行った時、海外で使える携帯電話をレンタルしたのだけれど、この時も感動したなぁ。電話事情の悪いロシアで、なんのストレスもなく日本へ通話できるのが、これまた夢のようでした。今はさらにインターネットです。なんだか、1万キロ以上も離れている気がしないなぁ。16年前に放浪していたときは、ホント日本は『かの地』って感じでしたからね。ありがたい。

12時半に、ホテルのロビーで鈴木さんと待ち合わせ、早速ニンヘェンブルク城へ行きました。ウィーンのシェーンブル宮殿に似たこのお城は、17世紀から19世紀に渡って作られ、その建物と庭園は眩いばかりの優雅さ。庭園は市民の憩いの場として解放され、自由に行き来できます。造園とは言え、ヨーロッパ人は本当に自然を生活の中に取り入れるのがうまい。ドイツは特にエコ意識が強い国でもあります。まず、どこに行っても紙コップや紙の皿がない。全部リサイクル素材なのです。自然を壊さない、共存するというのが、彼らの考えの原点なのでしょう。確かに、昨日のドイツ博物館で見た炭坑のジオラマや、リール工業地帯に代表されるドイツの工業技術は、19世紀から20世紀に渡る世界のトップ技術でした。飛行機やエンジン・原子力など、今や僕らの生活になくてはならない基盤がこの地で開発されてきました。しかし、今は生活環境の自然への共存が、もっと率先して行われているのです。でも、それはこのニンヘェンブルク城を見るように、元々ドイツ人にあったものなんでしょう。無理のない、肩肘張らないエコ意識が、すでに何百年も前から根付いていたんだな思います。

そんなことを徒然に思いながら、市電に乗って、次ぎはミュンヘンっ子の胃袋といわれるビクトリエンマルクトへ。ここは、肉・魚・野菜に果物等など、いろんな出店がひしめき合っている市場です。土曜日ということもあってか、お昼過ぎなのに凄い人出。いろんなお店をひやかしながら、鈴木さんお勧めのピクルス(西洋風きゅうりの酢漬け?)のお店へ。一本単位で売ってくれて、その場で立ち食いをするのです。ファーストフード感覚。スッパイかなと思ったのですが、意外にそれ程でもなく食べやすい。大柄なドイツ人に混ざって、人だかりの中、きゅうりをパクつきます。

ドイツでは、ソーセージの付け合せに、ザワ?クラフトというキャベツの酢漬けのようなお惣菜が付いてきます。ドイツ人はこのような酸味のある食べ物も好みなんだなぁ。ただ、鈴木さんによれば、ヨーロッパの野菜は、加工しないと硬かったりマズクて食べられないから、このような料理法が発展したのだということでした。土地土地に合わせていろいろと考えるものだなぁ、と感心。

その後、市内を歩き、ミュンヘンの州立音楽学校を見学に。この建物は、元々ナチスの本拠地だったらしく、ギリシア風の建物で、威圧感を感じるほど堂々としたものでした。でも、一歩中に入れば、そこは音楽学校。あちこちから、ピアノを練習する音が聞こえてきます。なんだか懐かしい雰囲気。ここから、未来の音楽家が巣立っていくんだなぁ、と思いながら大理石でできた廊下を、静かに歩いて行きます。おお、上から下まで全部大理石だ。さすが元ナチスの本拠地。変な感心をしてしまった。

音楽学校をあとにして、散歩しながらホテルへ戻ります。ミュンヘンは、そんなに大きくない街です。市電やバス・地下鉄も発達していますが、歩いて見て回るのも充分可能な大きさなのです。日頃、全くと言って良いほど歩かない僕ですが、こうして毎日歩くと、体の調子がイイ。快食快便。天気の良い日にこうしてノンビリ歩くのは良いものですね。東京での締め切りの毎日がウソのよう。こんなんで、帰国してまた東京の生活に戻れるのかしら…。

すっかりお世話になった鈴木さんに、充分なお礼も言えないまま、次の予定があるのでと、ホテル前で別れます。ドイツに来て、もう30年以上になる鈴木さんは、バイエルン放送響では終身楽員になっているらしい。既にオケの中では古カブです。いろいろなドイツの音楽事情やオーケストラの状況などを教えていただきましたが、本場ドイツでも、音楽家の環境は決して良いものではないようです。若い人達のクラシック離れへの懸念や、啓蒙の意図もあって、今回のような「ヤングピープル・コンサート」をはじめとするいろいろな活動をやっているとか。鈴木さんは、日本から「題名のない音楽会」のビデオを友人に送ってもらい、いろいろ研究をし、ドイツ版の「題名?」を作りたいともおっしゃっていました。僕も、偶然とは言え、この番組に携わっているスタッフの一人として、何かお手伝いできればと思いました。 オーケストラの音楽は、取っ掛かりは難しいように思われがちですが(ドイツでもそのようです)、クラシックだけでなく映画音楽・ポップス等など、一度好きになれば一生の友達になれる宝物なのです。そういうキッカケ作りのお手伝いができれば嬉しい。

さて、今日のメインイベントはもうひとつ。バイエルン州立歌劇場での「エレクトラ」。ミュンヘンに来てオペラを観ないわけにはいかない。しかも、R.シュトラウスの「エレクトラ」。日本じゃめったに公演される演目じゃないから、これは希少価値。大体この作品、オーケストラも4管編成(ホルンなんて8本!)で、100人近い楽員がオケピットに入って演奏するのです。これは壮絶。期待に胸を膨らませ、公演30分前には歌劇場へ到着。パルテノン宮殿のような作りの入り口から入り、3階席の中央最前列の席に着席。まあ、我ながら良くこんなイイ席が取れたものだと、座ってから感心しました。客席は満席、4階以上の後ろには立見もいるほどです。開演前まで、うんぬんと母親に「エレクトラ」のあらすじを説明し、あとは眼下のゴージャスなお客様方をウォッチング。さすがですね、みなさん。タキシードにイブニングドレス。絵に描いたように紳士淑女がご着席なさってます。歌劇場のもうひとつの側面は、社交場でもあるわけで、開演前までの時間を楽しそうにオシャベリしてます。そんなザワザワとした雰囲気の中、オーケストラの楽員たちがピットに入ってきて着席。しばらくして、拍手を受けながら指揮者も登場。

さぁ、開演。ジャン!

おお、やはりウマイ!当たり前だけど、つい感心してしまう。オペラのオーケストラって、正直言ってあまり上手いところがないんですよ。その理由は、ここでは割愛しますけど、このバイエルン州立歌劇場のオーケストラは凄い。しかも、R.シュトラウスの派手なオーケストレーション&大編成だから、最初から目(耳?)を皿のようにして(?)聴きました。タイトルロールのエレクトラを演じるGabriele Schnaut女史をはじめ、歌手陣も素晴らしい。演出・装置も、ドイツらしくモダンな中に観念的な意図のある出来映えで、あっという間の2時間でした。初オペラ体験(初めてがバイエルンとは贅沢?!)の母親も、感動していたようです。期待はしていたものの、それ以上の好演で大満足。

それにしても、シュトラウスは派手にオケを鳴らすなぁ。でも、それが歌い手の邪魔をするわけではなく、ドラマをより興奮へと導いていく。やはり、オペラというものをトコトン知っているんだなぁ。劇伴の仕事をしている僕としても、勉強になるところが多々ありました。

火照った顔に夜風が気持ち良く、今日の演奏の感想を話しながらホテルへ。明日は、朝からミュンヘン・フィルのコンサートだ。今日も早く寝なくっちゃ。

おっと、その前にビールね。

9月27日(金)またまた小雨のち曇り

どうも今回の旅は、天候に恵まれてないのかなぁ。

今日のコンサートは、朝の11時開演です。日本では、そんなコンサートないよね。「Young People Concert」は日本でいう、小学生から高校生までの年代の学生を招待してのコンサートです。

早めの朝食を取ってコンサート会場へ。 会場には、すでに学生がかなりの数集まっていました。こういう歴史のある劇場で、一流のオーケストラの演奏を体験できるのは、子供達にとってとても有意義なことです。Fechner氏の解説も、子供達の興味を引くような話術(ドイツ語の分からない僕にもそう感じられた)で、彼らが興味津々で聞いている姿が、とても印象的でした。

さて、コンサートの方は、昨日と同じプログラムで進められ、同じように僕もステージに呼ばれました。今日は、昨日と違い落ち着いているぞ。英語でのトークにも少し余裕がありました。その分、ステージから客席を意識して見ることが出来たのですが、作曲家というモノを目の前に見るのが珍しいのか、みんなパンダを見るような目で見ている。そりゃ、普段聴くクラシックの大抵の作曲家は、歴史上の、つまり死んでしまった作曲家ばかりですからね。コンサート前の打ち合わせでも、Fechner氏が「子供達にとって『生きている』作曲家を見るのはセンセーショナルだろう」なんて話していましたが、作曲家ってドイツでも、もう恐竜のような存在なのかしら・・・。嬉しいような、悲しいような。

でも、何かしら子供達の印象に残ってくれればと思います。音楽って、決して過去のものではなく、今を生きている人達のためにあるんだからね。そして、それが受け継がれていく事が、本当の意味での「クラシック」なのだと思うから。演奏の方は、昨日にも増しての熱演で、お客さんからもブラボーの声(奇声?)が上がるほどの受け様でした。僕の作品「民舞組曲」を選曲してくれたFechner氏も、ステージ上で嬉しそうでした。

コンサートが終わり、ステージ裏へお礼の挨拶に行くと、オーケストラの楽員も嬉しそうに握手を求めに来てくました。もちろん、パーカッションのメンバーの顔も、いっぱいの笑顔でした。日本から持ってきた拍子木と鈴を、今回の演奏会の記念にプレゼント。うちわ太鼓も欲しそうだったけど、これは次のノルウェーでのコンサートでも使うので勘弁してもらうことに。ヨーロッパと言うのは、打楽器がアジアより発展しなかった経緯があります。特に「皮もの」の楽器である太鼓は、アジアの方が断然種類が多いのです。その意味でも、彼らがとてもこの「うちわ太鼓」に興味を持ったのもムリはありません。僕の連絡先を渡して、もし気に入ったのなら僕が日本から送るよ、と伝えたらメッチャ嬉しそうにしていました。そりゃ、こっちじゃ手に入らないもんな。Fechner氏と指揮者のBufalini氏、オケのマネージャーとスタッフ、みな今回のコンサートに満足している顔でした。何度も握手をし、何度も感謝の言葉を言い、別れ難い気持ちを押さえつつ、会場をあとに。

外はまだ雨でしたが、僕の心は晴れ晴れとしていました。 「まずは、ミュンヘンは無事成功かな。」そんな感想を持ちながら、一旦ホテルへ。今日はマチネ(朝からだけど)だったので、ホテルへ戻ってもまだ2時くらいです。さて、これからはじっくり観光タイム。まずは、今回是非行ってみたかったドイツ博物館へ。ここは凄いんですよ!もう何が凄いって、このドイツ人のこだわりようったらないです。歴史を追った地下の炭坑のジオラマ。しかも実物大の炭坑扶までいるんですよ。本物の炭坑のように複雑な通り道で、約800mはあるそうです。それから、ヘリコプターや飛行機の実物の展示。メッサ?シュミットやジェット戦闘機、旅客機の実物もあるんですよ。もうその量は半端じゃありません。その他、帆船や気球、車や蒸気機関、化学や原子関係、楽器等などドイツの誇る様々なものが分かりやすく展示してありました。もう1日中いても飽きないな。気がつけば閉館時間になってました。段々電気が消えていくんですよ。おいおい、まだ人いるよ。こんな強引なところもドイツなんでしょうかね。

夕食は、今夜はホフブロイという王立ビール工場直営のビヤホールへ行く計画でした。他のケラー(ビール工場直営店)やレストランで毎日ビールは飲んでるんですが、やはりホフブロイは一度は行かなきゃね。 ところが、店の前に行ってビックリ。もうそこには長蛇の列。しかも並んでる連中は、すでにオクトーバーフェストで酔っ払ってるし…。とてもシラフの僕達は入れそうにないので、近くのレストランへ予定変更。ここもかなりの賑わいだったけれど、この位の方がお祭りらしいなということで入店。お店には、地元ッ子やドイツの各地方だけではなく、イタリアやアメリカなど多くの人種が混ざり合って食事をしていました。おお、コスモポリタンな感じだ。僕らのテーブルのウエイターさんも、チュニジアから来た出稼ぎさんらしく、ドイツ・イタリア・英語等など計5カ国語を話すと言っていました。日本語もチョット。ヨーロッパって陸続きだから、こういうお祭りの期間だと、いろんな国から「人間」が流入して来ます。「観光客」と言わなかったのは、それ以外にスリ集団やジプシー、ヒッピーなども多いから。

も、そういう人達がとりあえず入国できるのが、陸続きの特徴なんでしょうね。そういう僕も、16年前のヨーロッパ放浪時代、ビザの有効期間の3ヶ月以内で、いろんな国々を転々としてましたからね。その頃の僕みたいな人達が、ここには大勢いるんですよ。大勢いるから気にならないし、取り締まりも厳しくない。まぁ、そんなのんきな所がイイですね。 さて、そうして夜中の12時を過ぎて店を出ても、街中はまだまだ賑わっている。地下鉄やトラムも1時過ぎまであるから、ホントに便利。ドイツは、ヨーロッパの中でも治安の良い国だけど、それがまた安心感となって賑わっているのでしょう。

明日は、バイエルン放送響のヴァイオン奏者の鈴木さんが市内を案内してくれるそうなので、今日のことろはこの辺で帰って寝るとします。

9月26日(木)小雨

今日もミュンヘンの天気は不機嫌模様。うーん、僕って晴れ男のはずなんだけどなぁ。ドイツのようなヨーロッパの内陸部や北部は、夏が終わると、このようなドンヨリ天気が続くのです。そして、次第に夜の長い季節となります。サマータイムがあるのもそのため。だからこそ古くから、コンサートやオペラ等、夜長を楽しむ娯楽が発展し、数多くあるのでしょう。

さてさて。朝食をとった後、あまりの寒さに、コートか冬ジャケットを買うために街に出ます。地下鉄に乗って2つ目、マリエン広場というミュンヘンの中心地に到着。ドイツは、地下鉄・市電(トラム)・バス等の切符がすべて共通で、一度切符を切ると制限時間内は乗り放題なのです。これが実に便利。主要な市街地は、たいてい2ユーロのチケットで大丈夫なので、とても経済的。トラムなどはさしずめ、観光電車のような雰囲気。街の古い建物を見ながら目的地へと運ばれます。

さて。マリエン広場についた僕たちは、まずは観光案内所に行って、オフの日のコンサートのチケットを購入。ヨーロッパはなんと言ってもオペラの本家本元。しかも、ここミュンヘンのバイエルン州立歌劇場は、ドイツを代表する歌劇場のひとつです。ちょうどタイミング良く、リヒャルト・シュトラウスの「エレクトラ」の公演がありました。「2001年宇宙の旅」のオープニング曲(実は「ツァラトゥストラはかく語りき」という交響詩)でも有名なリヒャルト・シュトラウスは、19世紀末を代表するドイツの作曲家で、ミュンヘンの歌劇場でもタクトを振っていました。そのシュトラウスの作品を「生」で、しかも本場で観れるなんて!・・・いやいや、何しに来たんだか・・・。

さらにもう一つ、バイエルン放送響と並ぶミュンヘンのオーケストラ、ミュンヘン・フィルハーモニーのコンサートチケットをゲット。しかも、プログラムがロシアを代表する現代作曲家シュニトケのチェロ協奏曲とドボルザークの「新世界」。うわぁ、なんちゅうプログラム!でも、これも大いに楽しみ。チケットをゲットした僕らは、ジャケットを探しに店を転々としました。なにせ、ミュンヘンの後はノルウェー。さらに寒いのです。気合を入れて防寒具を探します。いやー、10件以上はまわったかなぁ。お陰でミュンヘンのファンション事情も見えてきました。日本と同じように、三越のようなデパートからイトーヨーカドーのような大衆派のお店、そして若者向けの専門店など、それぞれのニーズに合ったお店がマリエン広場を中心に並んでいます。専門店などは、どのお店も個性的。思わず他の物を買いたくなる衝動を押さえつつ、本来の目的の防寒ジャケットを探しました。ようやくそれをゲットした頃には、もうコンサート会場へ行かなくてはいけない時刻が迫っていました。今日はいよいよ本番。

ゲネプロ(ステージでの最終リハーサル)の1時間前に、今回の「ヤングピープル・コンサート」の記者会見を見学しました。と言っても、学生による学生新聞の会見です。こちらは学生達のこういった活動が活発で、オーケストラのマネージャーやソリストなどを招いて、学生自身の進行で手際良く進められていました。クラシック音楽の本場と言えるここドイツでも、若者がクラシックを聴く機会は少ないそうです。だから、こういったコンサートを定期的に企画し、よりオーケストラを身近に感じてもらおうという意図のようです。(日本でも音楽鑑賞教室というのがありますが、それとはちょっと雰囲気が違っています。)今回の「オーケストラと打楽器の音楽の叩き合い」のように、毎回テーマを決め、いろんな角度から解説をしてコンサートを進行していきます。「民舞組曲」も日本の打楽器をいくつか使用しますが、伝統的な楽器とオーケストラとの組み合わせも、今回のコンサートの企画に沿ったものらしいです。お陰で、僕も舞台上に上げられて、Fechner氏とトークをしながら楽器の説明をする羽目になってしまいました。

学生達の記者会見が白熱し、時間が押してしまったので、僕とFechner氏は途中退席し、オーケストラのゲネプロへと向かいました。ステージには、何十本ものマイクがスタンバイしてありました。このコンサートの模様は、ドイツのクラシック4というチャンネルで放送されます。そのため、まずはマイクチェックや打楽器の音量バランスのチェックです。ここで感心したのは・・・さすがドイツ人、妥協を許さないしつこさなのです。確かに、録音のためにはこのチェックが最も重要なのですが、たっぷり1時間以上はかけていました。日本でそんなことしたら、オケの連中がブーブー言うだろうな・・・(笑)。このオーケストラは放送局付きのオーケストラということもあって、このような録音の準備にはもう慣れているんでしょうね。ゲネプロ自体も細部に渡って練習していました。

大体、世界各国の放送局付きのオーケストラはウマイと言われていますが、こうした録音に際しての細部に渡るリハーサルをやっているからでしょう。弦楽器セクションなども、最後尾のプルトまで、一糸乱れぬアンサンブル。これって、プロでもなかなか大変なんですよ。しかも、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」を目の前で(ホント2mくらい先で)完璧なアンサンブルで聴かされた時にはブッたまげました。万事がこういう状態なので、僕の曲の時ももうアンサンブルは完璧でした。ちょっとドイツなまりの節回しも微笑ましく聴けるのは、演奏の確かさから来るんだろうなぁ。なによりも、オーケストラが楽しそうに演奏しているので、僕の注文は何もない状態なんです。むしろ、コンサートでの僕のトークの方が心配。

さて、ゲネプロは続いていたのですが、地理に不案内な母親を迎えに行かなくてはいけないので、会場をいったん出ました。今日と明日の会場であるPrinzregententheater(なんて言いにくい名前だ!)は、ミュンヘンの中心から車で10分。威厳と風格のある劇場で、天井の装飾なんかも美術館のようでした。ホールの係りの人達も、もうここに勤めて50年って感じで、劇場と一体になってました。ホールの響きも劇場にしては良い方で、むしろ僕の曲は打楽器がウルサイから、響き過ぎるホールよりはこのようなホールの方が良いかもしれない。

ラッシュアワーの街なかを往復して、劇場に戻った時は、もう薄暗くなっていました。雨のせいもあるんでしょうが。これからのヨーロッパは夕暮れが早いのです。まさにコンサート・シーズンの開幕というわけです。開演の15分前には席について、観客の様子を眺めていました。普段僕は、初演の時でもあまりドキドキしたことはありません。むしろ、お客さんがどんな顔をして入ってくるのか、観察をするのが好きなんです。どんな曲かしらと楽しみにしていそうな顔や、ゲンダイオンガク?って顔しながら入ってくるお客さん。どの顔も僕は好きなんですよ。コンサート後には、みんな笑顔になって欲しいなと思いながら見てるんです。でも、今日はちょっと事情が違いました。ステージでのトークの事が気になる。Fechner氏は何を聞いてくるのかな? 一言二言だから、なんて言ってたけど、そんなことないだろう・・・。珍しく公演まえに緊張。

そんな中、ステージでは楽員が拍手で迎えられながら席につき、続いて指揮者のBufalini氏とFechner氏が登場。Fechner氏の巧みなお話(ドイツ語なので内容はわかりませんが、口調がDJのようでした!)があって、1曲目のWilliam Henry Fryの Niagara Symphonyが始まりました。2曲目は先述したプロコフィエフ、3曲目がRalphVaughan Williamsの Sinfonia antartica 第一楽章。そしていよいよ4曲目が「民舞組曲」です。今回は「民舞組曲」中から、第一曲目「囃子」、第三曲目「踊り」、そして第五曲目「土俗的舞曲」が演奏されます。

演奏に入る前にFechner氏から紹介を受け、ステージに上げられました。いやいや、久々に最高の緊張感。Fechner氏は僕をドイツ語でお客さんに紹介した後、僕に英語で打楽器の質問をしてきたのですが、少々舞い上がってしまってトンチンカンな英語を言ってしまいました。ん?なんだか会場がザワついてるぞ!?僕の英語のせいかな?余計な心配をしながらも、Fechner氏とのトークを進めて、無事客席に戻った時には、もうコンサートが終わった気分でした。でも、温かいミュンヘンのお客さんの笑顔に気を取り直し、さぁ、いよいよ演奏だ。

ドイツらしい、落ち着きがありながらも、燃える演奏で第一曲目が終わった途端、思わずお客さんの拍手が!本場ドイツでも、楽章の途中で拍手が起きるなんて!ちょっと嬉しい誤算でした。そして第三曲目・第五曲目が迫力ある演奏で終わった途端・・・おもいっきりの拍手で迎えられたのです。指揮者に促され客席から挨拶したのですが、どのお客さんの顔も、そしてオーケストラの楽員の顔も笑顔だったのが何よりも嬉しかった。嬉しさとホッとした気持ちで着席。その後のプログラムはゆっくりと聴けました。(ドイツの作曲家Zimmermannの作品とイギリスの作曲家Gregsonの作品。)

コンサート後は、レセプションがありました。欧米ではコンサート後に、よく後援者や関係者、そして当夜の指揮者やソリストを招いてレセプションをします。延々とドイツ語のスピーチを聞かされるのはキツかったのですが、コンサートの成功の余韻もあって、指揮者や楽員、オケのマネージャー、そしてFechner氏と楽しく語らった後、会場をあとにしました。  海外での公演ではいつも、どこの馬の骨とも分からない若い(?)作曲家の作品を、本当に快く受け入れ共感してくれる姿に、感謝の念でいっぱいになります。僕の純音楽の作品のスタイルは、「日本の民俗音楽の現代での有様」なのですが、それが日本でなかなか演奏されることがなく、こうして海外で演奏されることに、戸惑いと感謝がいつも同居するのです。レセプションの時に、あるご婦人から「今日の曲をいつも聴きたいからCDがあったら教えて」と言われた時には、月並みだけど、音楽に国境はないんだなとつくづく感じました。

ああ、今日もビールが美味いぞ!

9月25日(水)曇り

程よい緊張のせいか、7時前には目を覚まし、ちゃんと朝食。外はどんよりの曇り空。今日も寒そうだなぁ。

10時からのリハーサルだけど、日本から持ってきた拍子木やうちわ太鼓などを渡すため早めに出発。車で10分くらいの所に「Bavaria Studio」というオーケストラの専用の練習場があり、中に入るとすでにほとんどの楽員がスタンバイ状態でした。ドイツ人はやはりマジメなんだなぁ。僕の曲からリハーサルとだったのですが、一生懸命フレーズをさらっているドイツ人の後ろ姿にちょっと感動してしまいました。

今回のコンサートの企画・司会のWinfried Fechner氏が直ぐに僕を見つけてくれました。まずはご挨拶まわり。日本との連絡や今回のお世話をしてくれるConstanze-Isabell Buslさん、指揮者のMarcello Bufalini氏、日本人ヴァイオリン奏者の鈴木さん等など、次から次へと紹介してもらいましたが、僕の少ないメモリーではもうイッパイ状態。肝心の打楽器を携え、パーカッション奏者のところへ向かったのですが、うーん、もう名前が頭に入らない。でも、拍子木の打ち方やうちわ太鼓・馬子鈴の説明をしながらコミュニケーションを深めることができました。やはり音楽家同士は言葉よりもこの方が早いや。僕の曲にはこの他にも、びんざさらという楽器を使うのですが、それは既にこのオーケストラにありました。おお、びんざさらって世界的な楽器なのか!と思ってしまいましたよ。

一通りの説明を終え、早速リハーサルへ。指揮者の後ろに席を作ってもらいましたが、座るまもなく、インスペクターがドイツ語でなにやら話した後、僕にコメントしろと促します。もちろん、ドイツ語は出来ないのでヘタクソな英語でご挨拶をしてコンサートマスターと硬い握手。

さぁ、いよいよ音出しだ!このバイエルン放送響は、ドイツではベルリン・フィルに次ぐ世界的なオーケストラ。さすが、一発目から感動の鳥肌が立ってしまいました。今回演奏される「民舞組曲」は、僕の作品の中でも特に民俗色の強い作品なのですが、ドイツ人の演奏する日本の節がこれまたイイんだな。弦楽器や木管の歌い回しや打楽器のノリ、金管のパワフルさはもう言うこと無し!凄いです!

リハーサルが進むごとに、必ず指揮者が振り返り、僕に「これでいいか?」と尋ねてきます。もちろん悪いわけが無い。OKのジェスチャーをして答えるのですが、欧米では必ずどこでも、この様に作曲家をリスペクトしてくれます。それは彼らの、音楽と伝統に対しての畏敬の念の表れで、音楽に対して、いつでも真摯な気持ちで取り組んでいるからなのでしょう。

非常に細かなリハーサルをみっちり1時間以上やって、1セッションのリハーサルを終えました。終える前に、また「何かないか?」と尋ねられたので、ひとつだけ「囃子」の掛け声の仕方を説明しました。これはやはり、楽譜には書きこめない「伝統的なもの」のひとつですからね。1曲目の「囃子」には、パーカッション奏者が演奏しながら掛け声をかけるところがあるのですが、これがヨーロッパ音楽にはないテイストで、大変興味深かったらしく、楽しみながら叫んでいました。大柄なドイツ人が叫ぶんだから、なかなか迫力があります。オーケストラの中の打楽器というのは、比較的活躍の場がある作品が少ないので、僕の曲などはハリキリ甲斐があるのでしょう。見ていて僕も楽しくなってしまいました。

リハーサルの後も、Fechner氏と明日の打ち合わせ。今回氏がこの「民舞組曲」を選曲した経緯なども聞きました。数ヶ月前に、突然僕のところへ「民舞組曲の楽譜を貸してくれ」とメールが届いた時には、本当に驚いたのです。あのバイエルン放送響が演奏してくれるの?と思わずネットで公演プログラムを探してみたら、ありました。まだ楽譜も送ってないのに・・・(笑)。でもFechner氏は、この曲をCDで聴いた時いっぺんで好きになり、是非演奏したかったと熱く語ってくれました。作曲家にとって、これほど嬉しいことはありません。

作品は、作曲家がいくら作っても演奏されなければ、ただの楽譜です。作曲家の手を離れ、演奏されて、一人歩きをした時こそ、その作品は完成されるのだと僕は思います。遠くドイツでから「民舞組曲」を演奏したいとメールをもらった時に、僕はそれをまた確信しました。

熱い気持ちでBavaria Studioを後にした僕は、フェスティバルで賑わう街中を、不慣れなバスや地下鉄を乗り継いでホテルへと急ぎます。実は、今回の旅には母親が同行しているのです。本当はヨメさんを連れてきたかったのですが、仕事の調整がつかず取り止めになったのでした。まぁ、親孝行ということで声をかけた次第。母親を連れて街へ昼食と買い物に。一人旅もイイものですが、話し相手がいる旅もまた良いものです。しかも、母親との二人旅は初めて。これからチン道中になるだろうな・・・。早速、随分と買い物に付き合わされてしまいました。まぁ、これも親孝行ですね、トホホ・・・

9月24日(火)日本は晴れ⇒ミュンヘンは雨

秋の気配が近づく日本を旅立って約12時間。例によって前夜はバタバタと支度をしていてほとんど寝ていなかったので、機内ではぐっすりモード、気が付けばもうドイツ上空という状態。我ながら効率のイイ旅だなぁと感心してしまいます。

ミュンヘンに降り立ったら、そこは日本の初冬の寒さ。5℃だって?! 吐く息がもう白いんですよ!日本とあまり変わらないって聞いてたのに・・・。コート持って来てないじゃん!しかも雨で傘も無い!ちょっと寂しい気分でホテルに向かいました。でもタクシーから見る外の景色は、もうヨーロッパそのもの!麦畑に深い森。ドイツは15年ぶり、ミュンヘンは初めてということで、心は次第にウキウキ(死語?)状態に。しかも、時は偶然にもオクトーバーフェスの真っ最中。別名ビール祭りという、世界的に有名なミュンヘンのビールのお祭です。こりゃビール好きにはたまらん!なにせ、昼間っからみんなビール飲んでるんですよ。もうミュンヘン滞在中はビール漬け確実だな。

明日は朝からリハーサル。今日飲み過ぎて二日酔いで行ったら大恥なので、寝酒の一杯でオトナシク就寝しました。