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現代音楽からTV・映画の劇伴や舞台・イベントなどの作曲や編曲etc.

Column 2002年「ドイツ&ノルウェー旅日記」

10月3日(木)曇り⇒晴れ

今日のリハーサルは、笙のソリスト宮田まゆみさんの到着スケジュールの都合で、夕方の4時からスタートということになりました。今回の公演には、僕の作品のほか、近衛秀麿の「越天楽」、三木稔氏の「舞」、そして新作委嘱作である猿谷紀郎氏の「玉の緒」が初演されます。その猿谷氏の曲が笙とオケのコンチェルトなのです。オーケストラ側からのリクエストらしいですが、難しい編成です。邦楽器の作品の多い僕でも、笙や篳篥など、雅楽の楽器はちょっと避けていました。なにせ、楽器の制約が多いし、その音律(楽器のキー)自体が西洋のそれとは違うので、そのコンチェルトとなると作曲はおそらく困難を極めるでしょう。そんな制約の中で作られた猿谷氏の新作は、雅楽のノーブルさの中、オーケストラとの調和に果敢に挑んだ秀作です。

コンサートのプログラムは、このような雅楽の響きから、僕のような土俗的な作品まで、まさに多彩なプログラムです。日本じゃ、こんなプログラム組んでくれるオーケストラはちょっとありません。もう少し日本のオーケストラも、自国の作曲家の作品を演奏して欲しいものです・・・。

今日のリハーサルも、大勝さんの丁寧な解説(伝統的な音響フレーズなどのイメージを伝えるんですよ)のもと、オーケストラもとても積極的にその響きを理解しようと努めてくれています。とても良いコラボレーションです。僕の作品以外は、3曲とも彼らにとっては初めての曲なので、そのイメージを掴むまでは、ちょっと慣れない感じもしましたが、リハーサルを重ねていくうちに、そんな不安は飛んでいくものです。音楽という共通言語で結ばれるからこそ、次第にお互いを理解していけるのでしょう。それが、伝統に根付いたものであっても「感じる」ことに国境はありません。そんな、貴重な体験が出来る今回のプログラムです。

僕のこの「民舞組曲」は、10年くらい前に、初演指揮者でもある広上淳一氏が、このオーケストラでノルウェー初演をしてくれています。僕は、残念ながらその時は立ち会えなかったのですが、今回の再演で当地を訪れることが出来て本当に良かったと思っています。音楽といえども、人が演奏して初めて成り立つもの。ようやくお互いに顔を合わせ、話をし理解し、共感し合える時間がもてたというのは、とても幸せなことです。オーケストラのメンバーも、遠く日本からやってきた僕らを、とても歓迎してくれています。感謝。

今日のリハーサルも、たっぷりと練習をし、僕らは夜8時に食事へと向かいました。昨日のレストランが美味しかったよ、という話をしたら、みんな行きたいというので、今日もそこへ行くことに。昨日の海老と牡蠣のセットがオススメなのですが、宮田さんは本番前なので、ナマモノは避けることにしたようです。演奏家は、身体が資本なのです。公演前に食中毒にでもあったら大変。自己管理責任を問われてしまいます。だから、演奏会の前には、ナマモノなどは食べないようにしているとか。その点、作曲家はイイ加減。もう作品は出来上がっているので、腹を壊そうが、死のうが、演奏会には支障がありません。というより、本人達が、演奏家ほどの自覚がないのです。そういう訳で、猿谷さんと僕は、遠慮なく牡蠣を頼みました。それにつられてか、宮田さんも「2つだけ・・・」やってきた牡蠣を口に入れた途端、「オイシー!!」やはり食べ物の誘惑には勝てませんね。

あとは、白身魚やアンコウ、小さめの鮭等の料理を注文し、ワインを飲みながら11時過ぎまで盛り上がりました。明日、朝の10時からゲネプロだというのに、時間に気づかず、こんな遅くまで飲んじゃってスミマセン、宮田さん。でも、楽しいお酒でしたね。

その日もホテルへ戻ると、直ぐにグッスリ就寝。健康的だ。