祷歌
いよいよケルン公演の8月となりました!
今日は、そのコンサートで初演される2作品の内、
「チェロとオーケストラのための 祷歌」について書きます。
この作品は、今回のケルン公演の打ち合わせの中で、
チェロを独奏とした、何か叙情的な作品を取り上げたい、と言う意向から生まれました。
チェリストのオリバーさんは、拙作の「民舞組曲」の「追分」のチェロ独奏部を気に入ってくれていて、こんな感じの曲は他にないかと訊ねてくれました。
当初、日本の民謡や「荒城の月」などの古い歌をモチーフにした作品を考えていたのですが、それだとオーケストラがどうしても伴奏的になってしまい、作品として独自性に欠けてしまうと言う結論に達し、それだったら全く新たに曲を書こう! ということになった次第です。
タイトルにある「チェロとオーケストラのための」は、チェロ協奏曲ではなく、チェロとオーケストラが対等な位置を為すのを意味します。
作曲にあたり、オリバーさんが演奏したCDなどを送ってもらい、その叙情的な感性や音色、そしてその「歌い方」にとっても魅了されました。
そして、あるイメージが浮かんできたのでした。
神社の拝殿、もしくは自然の中で、巫女が憑依し神化していく様。
チェロを巫女とし、オーケストラを巫女を包み込む自然とする形態。
そういうイメージの下、カデンツァを挟んで緩急の構成から成る8分位の新作が完成しました。
タイトルの「祷歌」とは、僕が考案した造語ですが、厳粛な祈りの中で歌われる儀式的な作品を表します。
実は、この作品の作曲過程でとても悩むことがありました。
上記の楽譜にあるように、始まりは「A」の音で、これは僕が最初に楽想したキーなのですが、これらのフレーズを1音下げて「G」にすると、開放弦を多く使った楽案になるんです。
通常、弦楽器は開放弦を使った方が「鳴り」が良いとされ、どちらのキーに設定するか非常に悩みました。
まぁ、いくら悩んでもチェロを弾かない僕には判断できるわけもなく、知人のチェリストに相談することとなったのです。
「A」音バージョンと「G」音バージョン
知人のチェリストも、楽譜をパッと見た感じでは「G」の方が良いだろうと思ったそうですが、なんと「A」の方が以外としっくりくるということでした。
弾き易さはどちらも同じだそうなんですが、どちらかというと「A」の方が“意外といいかも”と。
曲を通した音色は、全く違うのですが、やはり最初にイメージした「A」の方が僕のイメージした音に合っていました。
結論。
「A」 音始まりとなった訳です。
やはり訊ねてみるもんですね。
今回のことは、知人のチェリストも意外な結果でしたが、彼曰く、
「やはり、作曲家が最初にイメージしたものが一番いいんだよ」
と、この言葉に勇気づけられました。
オリバーさんとも、来日中に何度か打ち合わせしましたが、なんの問題もないとのこと。
あとは、ケルンでの合わせリハーサルが楽しみなところです。
そちらもまた、このブログで報告しますね!